●3● JISSEN NEWS 2005.秋 No.149


(社) 実践教育訓練研究委員会  理事
(株) デンソー技術センター取締役社長
   デンソー工業技術短期大学校 校長
             萩野 幸一

 この度、当協会の理事に就任させていただきました、(株)デンソー技研センターの萩野でございます。前任者に引き続き、当協会の実践教育訓練研究の諸活動に微力ながら少しでもお役に立てる様つくしたいと思いますので宜しくお願い致します。
 今回、会員の皆様へのご挨拶に加え、少し紙面を拝借しまして、自社紹介をさせていただきます。
 当社は(株)デンソー及び国内外の172社におよびデンソーグループ各社の技術・技能人材の育成と訓練、並びに技術・技能評価システム構築や、製造体質強化の支援を行う教育の専門会社です。
 当社の育成モットーは、“理論と実践を身につける「実学一体教育」で、明日のモノづくりをリードする人材の育成”をすることであります。その中では、将来職場の核となる人材を育成する「デンソー工業技術短期大学校」、モノづくりの第一線で活躍できる技能者を育成する「技能研修」、事業戦略に貢献できる技術者を育成する「技術研修」、スキルアップの目標となる検定・資格取得を実施する「技術・技能評価」、モノづくりや教育ノウハウを活かしてそれぞれの企業の発展に貢献する「コンサルティング・支援」の五つのカテゴリに分けて実施しています。
 その中で、若年者の教育を行っているデンソー工業技術短期大学校では、将来モノづくり職場のリーダーになり得るマインド資質と技術・技能を育成訓練するため、工高課程・高専課程・短大課程に加え技能開発課程の4つの課程で教育を行っております。特に技能開発課程では、将来の高度熟練技能の伝承要員としての特別訓練を実施しており、当面の目標として技能五輪の全国大会や世界大会へ選手を出場させ、競合他社に負けない高度技能や判断技能の修得に挑戦させています。
 今後はグローバル化の伸展と少子化による労働力不足が更に加速され、また2007年問題など技術・技能の伝承問題など人材戦略は大きな転換点を迎えています。そういった中、実践力を持った優秀な若手人材の育成には、今後さらにに注力をしていかなければなりません。従いまして、当社で培った「実学一体教育」を供しながら、少しでもお手伝いができればと考えていますので、よろしくお願いします。








(社) 実践教育訓練研究委員会  理事
関東職業能力開発大学校
    校長 久保 紘
 実践教育訓練研究協会の理事に就任させていただきました久保でございます。
 私は、関東職業能力開発大学校の校長を務めている関係で、よく「実践教育とは何ですか」という質問を受けます。「物を作りつつ技能を技術にする知識を養うことです」と答えることにしていますが、その(存在)意義や位置付けまではなかなか理解してもらえません。
 それは一つには、文部科学省系の大学での教育が広く行き渡って、技能から、技術へ、そして理論へという通常の道順を、そこでは逆に辿る教育をして来たからだと分析しています。因みに「物を作りつつ技能を技術にする知識を養う」ことの有用さの例を上げてみたいと思います。ある中小企業の金型屋さんが真円の筒を作るために金型の最終工程を手で削って仕上げる例がNHKで取り上げられていました。確かに、すばらしい技術で、今までの数千点の金型作りの技能蓄積と職人の粘りと器用さの上に出来上がった技術は、滅多に真似のできない技術として高い評価を得ていました。一方、知識と技能の蓄積という特色を持つ実践技術者なら、例えば、半加工品の焼き鈍しをするとか、CADによる弾性計算をして、金型の形をだしてから削りにかかるとかしたと思います。実践教育を受けてくるとそのように応用が利く知識を得てくるわけです。物を作るという実践教育は、経験をするあるいは知識と技能の蓄積をするという特色を持ちますので、我々の日本文化に合った教育方法だと言えます。その実践教育の成果や方向性を示す事が、協会存在の主旨だと考えています。
 さて、今、官から民へと社会の流れが増している中で、官と民の間に存在する(市場メカニズムでは解決できない)多くの公(おおやけ)の部分が切り捨てられているように思います。 国民生活の向上、民意の向上には地域社会における様々なテーマ教育、中小企業向きの技術開発、雇用・労働環境整備、地域文化の維持・構築など公の担う部分があることを忘れてはいけないと思うのです。実践教育は、技能と理論とを巧みに結びつける教育法の1つであって、国(官)の文部科学省系教育と民の企業内訓練の間にあっていわば公の教育・訓練を巧みに担う方法であります。